1. 改正のポイント

(1)趣旨・背景
法人が支出する交際費は、冗費を抑制し法人の内部留保を高め財務体質の強化を図るという政策的観点から原則として損金不算入とされている。
しかし、販売促進手段が限られる中小法人にとって、交際費は事業活動に不可欠な経費であること等を踏まえ、交際費等の損金算入の特例措置が設けられている。
また、2014年(平成26年)度税制改正において、消費税率の引上げ後の経済活性化を図るため、交際費のうち接待飲食費の50%を損金とすることが認められていたが、一部の大企業につき、当該特例によって交際費が大きく変化している状況とは言えないことから、当該特例の対象法人から除外することとした。

(2)内容
接待飲食費に係る損金算入の特例の対象法人から、その資本金の額等が100億円を超える法人が除外される。
なお、交際費等の損金不算入制度の適用期限が2年延長され、2022年(令和4年)3月31日までとなる。
また、接待飲食費の50%の損金算入の特例及び中小法人の定額控除限度額(年800万円)までの損金算入の特例の適用期限も2年延長され、2022年(令和4年)3月31日までとなる。

(3)適用時期
接待飲食費に係る損金算入の特例の適用除外については、2020年(令和2年)4月1日以降開始する事業年度から適用される。

2. 改正の趣旨・背景

法人が支出する交際費は、冗費を抑制し法人の内部留保を高め財務体質の強化を図るという政策的観点から原則として損金不算入とされており、その適用期限が2年延長される。

他方、2014年(平成26年)度税制改正において、消費税率の引き上げ後の経済活性化を図るため、交際費のうち接待飲食費の50%を損金とすることが認められた。また、中小法人については新規顧客の開拓や販売促進の手段が限られているため、交際費の活用は必要不可欠な販売促進手段と考えられることから、従前より一定の範囲で交際費の損金算入が認められている。今回の改正においても、引き続き飲食店等に対する需要喚起や派生需要による経済活性化等を図るため、損金算入の特例の適用期限が2年延長される。ただし、一部の大企業において、接待飲食費の特例によって交際費が大きく変化している状況とは言えず、現預金の大幅な減少に寄与していないことから、資本金の額等が100億円超の大企業について、この特例の対象法人から除外するものである。

3. 改正の内容

(1)交際費等の損金不算入制度の適用期限の延長
交際費等の額は、原則として、その全額が損金不算入とされているが、当該交際費等の損金不算入制度の適用期限が2年延長され、2022年(令和4年)3月31日までとなる。

(2)損金算入の特例の適用期限の延長と接待飲食費に係る損金算入の特例の適用除外

法人 改正前 改正後
中小法人(※1) ①接待飲食費の50%の損金算入の特例(※2)
②定額控除限度額(年800万円)までの損金算入の特例(※3)
(①②の特例は選択適用となる。)
適用期限が2年延長される
中小法人以外 資本金の額等が
100億円以下の法人
接待飲食費の50%の損金算入の特例 適用期限が2年延長される
資本金の額等が
100億円を超える法人
接待飲食費の50%の損金算入の特例 適用除外となる

(※1)中小法人とは、期末資本金の額が1億円以下の法人(資本金の額が5億円以上の法人等に株式の100%を直接又は間接に所有されている場合における子会社等を除く)をいう。
(※2)接待飲食費の50%の損金算入の特例とは、交際費等のうち飲食その他これに類する行為のために要する費用(社内飲食費を除く。)であって、帳簿書類に飲食費であることについて所定の事項が記載されているものの額の50%に相当する金額は損金の額に算入する特例をいう。
(※3)中小法人の定額控除限度額(年800万円)までの損金算入の特例とは、中小法人は、支出する交際費等の額のうち定額控除限度額(年800万円)までは損金の額に算入できるとする特例をいう。

4. 適用時期

接待飲食費に係る損金算入の特例の適用除外については、2020年(令和2年)4月1日以降開始する事業年度から適用される。

5. 実務上の留意点

接待飲食費に係る損金算入の特例の適用除外について、資本金の額等の「等」が、大綱段階では明らかになっていないが、出資金の額を指すものと考えられる(租税特別措置法第六十一条の四第2項参照)。

6. 参考資料

(1)交際費の範囲
交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が得意先・仕入れ先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいう。

【交際費等に該当するもの】

飲食費 社内接待費
専らその法人の役員、従業員等に対する接待等のために要する費用をいい、一人当たり5,000円以下の判定はない。
1人当たり5,000円超の飲食費※
(飲食費の50%を損金算入できる対象部分)
(中小法人は800万円の定額控除と選択適用)
飲食費以外(得意先への贈答等)

【交際費等に該当しないもの】

1人当たり5,000円以下の飲食費※

  • ・福利厚生費で一定のもの
    • 専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用
  • ・少額広告宣伝費で一定のもの
    • カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐいその他これらに類する物品を贈与するために通常要する費用
  • ・会議費で一定のもの
    • 会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用
  • ・取材費で一定のもの
    • 新聞、雑誌等の出版物又は放送番組を編集するために行われる座談会その他記事の収集のために、又は放送のための取材に通常要する費用

(※)1人当たり5,000円以下の判定を行う飲食費は、次の点に留意する。
①当該飲食費の範囲に、テーブルチャージ料やサービス料のように飲食店に直接支払うものは含まれ、交通費等の付随する交際費等は含まれない。
②ゴルフ、観劇、旅行等の催事に際しての飲食は、5,000円以下かどうかを問わず、その催事と一体の行為として、その催事の内容に応じて交際費等かどうかを判定する。
③交際費等の範囲から1人当たり5,000円以下の飲食費を除外する要件として、飲食等があった年月日、参加した者の氏名、参加人数を記載した書類等を保存する必要がある。

(2)最近の交際費課税の主な改正事項

改正年度 対象法人
(資本金別)
損金算入限度額等
1998年(平成10年)度 5,000万円超 全額損金不算入
5,000万円以下 定額控除(300万円)×80%
1,000万円以下 定額控除(400万円)×80%
2002年(平成14年)度 5,000万円超 全額損金不算入
5,000万円以下 定額控除(400万円)×80%
2003年(平成15年)度 1億万円超 全額損金不算入
1億円以下 定額控除(400万円)×90%
2006年(平成18年)度 全法人 一人当たり5,000円以下の飲食費(社内飲食費を除く)について、
一定の要件のもとで交際費の範囲から除外
2009年(平成21年)度
(経済危機対策)
1億万円超 全額損金不算入
1億円以下 定額控除(600万円)×90%
2013年(平成25年)度 1億万円超 全額損金不算入
1億円以下 定額控除(800万円)(定額控除限度額までの10%の損金不算入措置を廃止)
2014年(平成26年)度 1億万円超 飲食費50%まで損金算入
1億円以下 定額控除限度額(800万円)までの損金算入又は飲食費50%まで損金算入の選択適用
2016年(平成28年)度 2年間の延長(2017年(平成29年)度末まで)
2018年(平成30年)度 2年間の延長(2019年(令和元年)度末まで)

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