(1)趣旨・背景
働き方の多様化を踏まえ、働き方や収入の稼得方法により所得計算が大きく異なる仕組みとなっている点の是正として、給与所得控除・公的年金等控除の一部を基礎控除に振り替える。また、基礎控除は生活保障的な意味合いから設けられているが、所得が高いほど税負担の軽減額が大きく、生活に十分余裕のある高所得者には措置する必要はないという考えに基づき、特に高額の所得がある者に限って控除を逓減・消失させる。
(2)内容
①合計所得金額(6-7参照)が2,400万円以下の個人は基礎控除額を所得税は48万円(改正前38万円)、個人住民税は43万円(改正前33万円) に引上げる。ー減税
②合計所得金額が2,400万円を超える個人についてはその合計所得金額に応じて控除額を逓減し、合計所得金額が2,500万円を超える個人については基礎控除の適用がなくなる(個人住民税についても同じ)。ー増税
(3)適用時期
平成32年分以後の所得税、平成33年度分以後の個人住民税に適用される。
(4)影響
①給与収入も公的年金等収入もなく、合計所得金額が2,400万円以下の自営業者等は減税となる。
②基礎控除の額が引上げられる一方で、給与所得控除・公的年金等控除の額が引下げられる改正が行われる。
わが国の基礎控除については、所得の多寡によらず一定金額を所得から控除する所得控除方式が採用されているが、高所得者にまで税負担の軽減効果を及ぼす必要性は乏しいのではないか、高所得者ほど税負担の軽減額が大きいことは望ましくないのではないかとの指摘がある。
主要国においては、一定の課税所得までは税率をゼロとする「ゼロ税率方式」や、課税所得に累進税率を適用した後に一定の控除額を差し引く「税額控除方式」、所得控除方式を維持しつつ高所得者について控除額を逓減・消失させる「逓減・消失型の所得控除方式」が採用されており、いずれもわが国の所得控除方式と比べて所得再分配機能が高い。
「ゼロ税率方式」や「税額控除方式」は、所得再分配機能の強化に寄与するものの、現行の所得控除方式から変更した場合、負担の変動が急激なものとなりかねないことから、「逓減・消失型の所得控除方式」を採用する。基礎控除は、人的控除の中で最も基本的な控除であり、より広い所得階層に適用されるべきものであることを踏まえ、所得金額2,400万円超から逓減し、2,500万円超で消失する仕組みとする。
①合計所得金額が2,400万円以下の個人については、基礎控除の控除額が一律10万円引上げられる。
・所得税については、改正前38万円、改正後48万円
・住民税については、改正前33万円、改正後43万円
②合計所得金額が2,400万円を超える個人については、その合計所得金額に応じて控除額が逓減し、合計所得金額2,500万円を超える個人については、基礎控除の適用がなくなる(個人住民税も同じ)。
合計所得金額 | 基礎控除額 | |||
所得税 | 個人住民税 | |||
改正前 | 改正後 | 改正前 | 改正後 | |
2,400万円以下 | 38万円 | 48万円 | 33万円 | 43万円 |
2,400万円超 2,450万円以下 |
32万円 | 29万円 | ||
2,450万円超 2,500万円以下 |
16万円 | 15万円 | ||
2,500万円超 | なし | なし |
平成32年分以後の所得税、平成33年度分以後の個人住民税に適用される。
①フリーランスや請負業などの自営業者等で、合計所得金額が2,400万円以下の場合は減税となる。
②基礎控除の額が引上げられる一方で、給与所得控除・公的年金等控除の額が引下げられる改正が行われる。
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