2008.10.27 その他
マンション売却によって生じた損失について、売却後に施行された改正租税特別措置法を遡って適用し、所得からの控除を認めなかったのは違法だとして、福岡市の女性が国を相手取り、処分取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が21日、福岡高裁でありました。
裁判長は「適用を4月以降にすると、徴税に混乱が生じる恐れがあり、駆け込み的な不動産売却を防止するためにも遡及は必要。法改正もある程度周知されており、違憲とはいえない」とし、女性の請求を棄却する原告逆転敗訴の判決を言渡しました。
改正法は、個人の土地、建物などの譲渡に伴う損失を他の所得から控除するのを認めないこととし、特例として譲渡や買い替えに伴う借入金がある場合には控除を認めるというものでした。平成15年12月中旬に税制改正大綱が発表され、平成16年3月に法案が可決されましたが、この譲渡損失の損益通算廃止については、適用は遡って平成16年1月以後とされました。
第1審の福岡地裁は「租税法規不遡及の原則に違反し、違憲無効」とし、租税法規の遡及適用を違憲と認めた初めての判決ともいわれましたが、その後、同様の訴訟で東京地裁が「合憲」としており、控訴審判決が注目されていました。
今回の福岡高裁の判決は、東京地裁の判決を支持した形となり、「不動産譲渡損の損益通算廃止の遡及適用」は合憲という司法判断の流れができたようです。