2011.02.21 相続税・贈与税 

大手消費者金融の元会長夫妻から海外法人の株式を生前贈与された長男が、贈与税など約1330億円の課税処分取り消しを求めた訴訟で、最高裁は18日、課税を適法とした2審判決を破棄し、処分を取り消しました。これは、個人に対する追徴課税取り消しでは過去最高といわれています。この最高裁判決により、国側の逆転敗訴が確定したため、国は約400億円の「還付加算金」などを含め、計約2000億円を長男に返還する見通しです。
訴訟では、長男の生活拠点の認定が争点となりました。贈与された99年当時の相続税法では、海外居住者が国外財産の贈与を受けた場合は非課税と規定していたため、長男が海外居住者であるか、国内居住者であるかが争われました。
長男は97~00年の3分の2を香港で過ごしましたが、国側は、課税逃れの海外滞在で実質的な生活拠点は国内にあると主張しています。
1審の東京地裁は「国内に生活拠点があったと認定するのは困難」と国側の課税処分を取り消しましたが、2審の東京高裁は「税回避目的で海外に出国して滞在日数を調整しており、課税は適法」と判断しています。これに対し、最高裁は「滞在日数という客観的な要素で決めるべきだ」と判断し、「税回避目的で海外滞在日数を増やしていたとしても、当時の法律では課税は違法」として原審である2審判決を破棄し、課税処分を取り消しました。
最高裁は、課税処分を取り消したものの、裁判長は次のような補足意見を出しています。
「一般的な法形式で直截に本件会社株式を贈与すれば課税されるのに、本件贈与税回避スキームを用い、オランダ法人を器とし、同スキームが成るまでに暫定的に住所を香港に移しておくという人為的な組合せを実施すれば課税されないというのは、親子間での財産支配の無償の移転という意味において両者で経済的実質に有意な際がないと思われることに照らすと、著しい不公平感を免れない」が、「結局、租税法律主義という憲法上の要請の下、法廷意見の結論は、一般的な法感情の観点からは少なからざる違和感も生じないではないけれども、」課税取り消しは「やむを得ないところである。」
この贈与のあった翌年、00年度の税制改正により、贈与する側か受ける側のいずれかが過去5年以内に日本に住んでいれば、海外資産も贈与税の課税対象となりました。
本件は、安易な法の拡張解釈をして課税することは許されないとする司法の態度が示されると共に、立法側に、変動する経済実態に対応した迅速な法整備の必要性を再認識させるものとなりました。

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