2006.11.20 所得税  相続税・贈与税 

長崎市の女性が、死亡した夫の生命保険特約年金に相続税と所得税を二重に課税されたのは不当だとして、国に所得税の課税取り消しを求めた訴訟で、長崎地裁が原告の主張を認めて課税処分を取り消したという報道がありました(西日本新聞11月9日朝刊)。
相続人が年金形式で受領する死亡保険金は、年金受給権として現在の価値に引き直して評価し、相続税が課税されます。その後、相続人が年金を受け取った際には、受け取った年金から支払った保険料相当額を差し引いた差額を雑所得として、所得税が課税されてきました(国税庁HPタックスアンサー No.1750)。
この事件で原告の女性は、「一度、相続税の課された年金受給権が現金化した個々の年金に対して所得税を課税することは、二重課税に当たり不当」と主張しました。一方、被告の国側は、「相続税は年金受給権に課税したものである。原告が支払を受けた年金は、一定期日の到来によって生み出される年金受給権の支分権に基づいて支給された現金で、年金受給権とは異なるので、雑所得として所得税が課税される。」と反論しました。
判決は「税法は、相続税を課すこととした財産について、二重課税を避ける見地から、所得税を課税しないものとしている。このような規定からすると、相続税を課税された財産と実質的、経済的にみれば同一のものと評価される所得に対して、所得税を課税することは許されない」としています。その上で、「年金受給権と個々の年金は実質的、経済的には同一であり、年金に対する所得税の課税は二重課税に当たり不当である」と原告の主張を全面的に認めています。
生命保険特約年金に所得税を課すことについて、判決が二重課税により不当としたのは初めてのことです。地裁判決ですが、今後、同種の裁判に影響があるかもしれません。

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