2022.09.28 海外デスクレポート 

現行のベトナム労働法では、12か月以上その会社に勤務した労働者が退職した際に、会社は当該労働者に対して、下記の計算に基づき、退職手当を支払わなければならないこととされています。


【退職手当の算定】

退職手当(整理解雇の場合) = 退職手当算定用給与額×退職手当算定用勤務期間 (年数)
退職手当(整理解雇以外の場合) = 1/2×退職手当算定用給与額×退職手当算定用勤務期間 (年数)

※退職手当算定用給与額 :労働契約に基づく当該労働者の退職直前6か月の平均給与月額
※退職手当算定用勤務期間 :失業保険未加入期間で、その期間が6か月以下であれば半年、6か月を超える場合は1年としてカウント


この退職手当の算定で用いる退職算定用勤務期間には、失業保険の加入期間は除外されます。

ただし、現在ベトナムでは失業保険が義務化されているものの、試用期間は失業保険の加入義務がありません。試用期間には要件により30日以内と60日以内の制度がありますが、いずれも退職手当算定用勤務期間が6か月以下として、3か月分(整理解雇の場合は6か月分)の支給額が求められます。日本には類似する制度がないことから、この労働法上の支払義務を理解していない日系企業も多いようです。

会計面では、現在のベトナム会計基準であるVASでは、退職給付会計が導入されていないこともあり、期末に在籍する労働者の退職手当の額を毎期把握してないケースも多いようです。M&Aの買収調査においては、特に労働者を多く抱える製造業を買収する場合には、この労働法に基づく退職手当が高額な簿外負債として存在しないか確認が必要です。

なお、ベトナムでは、2025年以降にIFRSとVFRS(IFRS非導入企業用)が新たに設けられ、現在のVASが廃止される予定です。退職給付会計がVFRSに導入されるかについて今後の発表が待たれます。

川越 太介

税理士法人山田&パートナーズ
海外事業部部長 税理士

2006年に大阪の税理士法人にて勤務。2017年に税理士法人山田&パートナーズに入所。 現在、ベトナムにおける税務・会計に関するサービスに従事している。 主な対応可能業務は会計税務顧問、進出支援、不正調査・内部統制、DD、VAL、移転価額サポートなどである。

  • 記載された内容は執筆者個人の見解であり、当税理士法人の見解ではないことをご了承ください。
  • 本記事の内容は一般的な情報提供であり、具体的な税務・会計アドバイスを含むものではありません。
  • 税制改正により、記載の内容と異なる取扱いになる可能性がありますことをご了承ください。

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