2023.02.03 海外デスクレポート
シンガポールでは、非居住者に対して一定の支払いを行う際に、支払者に源泉徴収が求められます。そのため非居住者への支払いがある場合には、源泉徴収の要否、税率(租税条約の適用の有無)、源泉所得税の納付期限について、その契約をする段階で把握し説明できるようにしておくことが重要です。
特に、日本法人がシンガポール法人を有する場合の親子間取引には、源泉徴収の対象とされるものが多く含まれているため留意が必要です。
シンガポール法人が非居住者に対して、主に下記の支払いが源泉徴収の対象です。なお、各項目のカッコ内に記載した割合はシンガポール国内法で定められている源泉徴収税率です。
*¹ 2023年1月1日以降は24%
*² 一定の選択をした場合には、22%(2023年1月1日以降は24%)
租税条約の減免措置が適用できる場合には源泉徴収の免除または制限税率を用いることができます。なお、租税条約の適用を受けるためには、あらかじめシンガポールの税務当局に居住者証明書等の提出が必要となります。
(例) シンガポール法人が日本法人に借入利子を支払う場合
非居住者に対する借入利子の支払いに適用されるシンガポール国内法税率…15%
日本シンガポール租税条約で定められている借入利子対する制限税率…10%
源泉所得税の納付期限は、源泉徴収義務のある支払いが行われた月の翌々月の15日です。例えば、支払日が2022年11月18日の場合には、源泉所得税の納付期限は2023年1月15日となります。
納付が遅延した場合には納税額の5%のペナルティが課され、さらに1ヵ月経過ごとに1%のペナルティ(最大15%)が加算されます(ペナルティの最大は20%)。
シンガポールでは配当金の支払いに対する源泉徴収はありません。特に、配当を受ける日本法人で日本法人税法上の海外子会社配当益金不算入制度を利用できる場合には、日本側で95%が益金不算入となるため、シンガポール側の源泉徴収なしと合わせて、効率的な投資の回収が可能です。
熊谷 仁志
税理士法人山田&パートナーズ
海外事業部 パートナー/公認会計士
2004年入社。日本国内にて、組織再編、M&Aコンサルティング、法人業務経験を経て、2016年4月よりシンガポールに駐在。日系企業の進出、現地での管理運営、組織再編を多数経験。