年金形式で受け取る生命保険に対する所得税の取扱い変更

~最高裁判決を受けて~

 平成22年7月6日付最高裁判決で、遺族が年金形式で受け取る生命保険金のうち、相続税の課税対象となった部分については、所得税の課税対象にならないとされました。
これを受けて、年金を受け取った際の所得税の取扱いが10月20日に変更され、過去の所得税が納め過ぎとなっている方は、納め過ぎの所得税について還付を受けられる可能性があります。
なお、取扱い変更の対象となる可能性のある方には、10月20日以降、生命保険会社等から情報が通知されます(ただし、住所を変更している方や年金受給にあたり所得税が源泉徴収されていない方等には通知が届きませんので、ご注意下さい)。
変更に伴い、所得税の還付を受ける場合には、還付の手続きが必要となります。

1.課税のイメージと変更点
年金を受け取る権利を相続、贈与等により取得した場合、取得した時点では相続税又は贈与税の課税対象となり、その一方で、毎年受け取る年金収入が所得税の課税対象となっていました。そのため、相続税又は贈与税と所得税が二重に課税されている部分がありました。
変更後は、相続税又は贈与税の課税対象とされた部分が所得税の課税対象から除かれます。
(下図ので囲まれた部分が、所得税の課税対象となる年金収入額)

変更前の課税対象
1-1

【所得税の課税対象】
「受け取った年金収入額」から「支払保険料相当額」を差し引いた金額。

 

変更後の課税対象

1-2

【所得税の課税対象】
「受け取った年金収入額のうち、相続税の課税対象 とされた部分を除いた金額」から「それに対応する支払保険料」を差し引いた金額。なお、年金受給初年度は全額非課税となり、それ以降は徐々に増加。

●還付を受ける場合には、ご自身で手続きをする必要がありますので、ご相談下さい。
●住民税や健康保険料については、所得税の手続きを通じて還付される可能性があります。

2.取扱い変更の対象となる方

相続、贈与等により取得した生命保険契約や損害保険契約等にかかる年金を受給している方が対象となります(実際に相続税や贈与税の納税額が生じなかった方も対象)。

なお、次のような場合には、納め過ぎの所得税が還付される可能性があります。

年金受取時の源泉徴収の有無 確定申告の有無
源泉徴収されている 確定申告をしていない場合
確定申告をしている場合
(源泉税額の全額が還付されている場合を除く)
源泉徴収されていない 確定申告をしている場合

 

3.取扱い変更の対象となる年金の種類

次のような年金にかかる所得税が還付対象となります。

種類
年金形式で受給している死亡保険金 契約者=被保険者が死亡し、相続人が死亡保険金を年金形式で受給している場合
養育年金 学資保険の契約者の死亡に伴い、養育年金を受給している場合
個人年金保険契約に基づく年金 ・契約者=年金受取人が年金受取中に死亡し、相続人が引き
続き年金を受け取る場合
・契約者≠年金受取人で、すでに年金受取人が年金受取を
開始している場合

4.還付を受けるための手続き

還付を受けるためには、ご自身で手続きをする必要があります。
なお、法律上、還付の時効は5年であり、今回の還付対象は平成17年分から平成21年分(平成17年から平成21年中に受け取った年金)です。
それ以前の分(平成12年分から平成16年分)については平成23年度税制改正により手当てされる予定で、その場合の還付手続きのスタートは平成23年以降となる見込みです(平成11年分以前については還付対象外の予定です)。

平成17年分~平成21年分の還付手続き

 

確定申告の有無 手続きの種類 提出期限
確定申告
している
更正の請求 取扱い変更を知った日の翌日から2ヶ月以内
(早い方で平成22年12月20日が期限となるため、早めの手続きが必要)
確定申告
していない
確定申告
(還付申告)
申告年分の翌年1月1日から5年間
例:平成17年分・・・平成22年12月末日

 

※ 提出期限については、平成23年度税制改正により延長される可能性があります。
平成12年分~平成16年分の還付手続き
今後発表予定。

 

5.計算方法のイメージ

変更前 変更後
各年の年金収入額から支払保険料相当額を差し引いて計算する (1)各年の年金収入額を、所得税の課税対象部分と 非課税部分(すでに相続税で課税されている部分)とに振り分ける
(2)所得税の課税対象部分から、それに対応する支払保険料を差し引いて計算する
5-1  5-2

 

(ご参考)変更前と変更後の所得金額の比較
【例】契約形態(契約者A、被保険者A、死亡保険金受取人B)、保険料:9,000万円、
死亡保険金:1億円(遺族年金特約が付されており年金額は年1,000万円)
Aに相続発生後、Bは死亡保険金を10年確定年金で受け取っている

受給年
初年度
受給年
2年目
受給年
3年目
受給年
4年目
受給年
5年目
変更前の
所得金額
1,000,000円 1,000,000円 1,000,000円 1,000,000円 1,000,000円
変更後の
所得金額
0円 88,888円 177,777円 266,666円 355,555円
受給年
6年目
受給年
7年目
受給年
8年目
受給年
9年目
受給年
10年目
合計
変更前の
所得金額
1,000,000円 1,000,000円 1,000,000円 1,000,000円 1,000,000円 10,000,000円
変更後の
所得金額
444,444円 533,332円 622,221円 711,110円 799,999円 3,999,992円

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「参考:国税庁ホームページ

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